肺癌
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発見動機は肺癌手術成績に影響するか
特に他疾患診療中の発見肺癌について
松本 英彦小川 洋樹豊山 博信柳 正和西島 浩雄愛甲 孝
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2002 年 42 巻 1 号 p. 17-22

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抄録

目的・方法. 1973年より1999年までに当科において手術を施行した原発性肺癌636例について発見動機別に検診群 (258例), 症状群 (262例), 他疾患群 (116例) の3群に分類し各々の特徴について検討した. 結果. 検診群は症状群・他疾患群と比較して年齢が若く男性の割合・喫煙指数・術後の心・肺合併症の発生も少なく他病死例も低頻度であった. 一方症状群は検診群・他疾患群と比較して扁平上皮癌・進行癌・非完全切除例が多数で術後の心・肺合併症発生率が高く他病死例も多く, 他疾患群の特徴として患者側因子は症状群と類似し, 腫瘍側因子は検診群と類似していた. 全死因で検討すると検診群, 他疾患群, 症状群の順に予後は良好であったが他病死をうち切りとすると検診群と他疾患群との予後の差は消失したことから, 他疾患観察中の肺癌発見症例の中にも検診発見例と同頻度の治癒可能な症例が存在すると考えられる. しかし一方で検診群でも縦隔リンパ節転移陽性例, Stage III・IVの進行癌症例が存在していた. 結論. 今後は肺癌検診のいっそうの精度向上とともに, 日常診療における胸部写真を有効利用しわずかな異常も見逃さずCTを撮影するなどの一般の医療機関への啓蒙も重要と思われる.

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