肺癌患者の死因の最も多くを占める呼吸不全の臨床像について検討を行った. 対象は1984年~1989年の6年間に当科にて全経過を観察しえた原発性肺癌患者75例であり, そのうち46例 (61.4%) にのべ53回の呼吸不全を起こしていた. 原因別頻度では呼吸器感染症, 腫瘍の増悪, 進展, 胸水貯留, 抗癌剤や放射線療法に伴う間質性肺炎が4大原因と思われ, その他DIC, 上大静脈症候群によるものも見られた. 呼吸不全から離脱した例は11例 (20.8%) あり, 呼吸器感染症, 間質性肺炎によるものが多く, 原因が重複せずに1つのみの場合, 呼吸不全時のPaO2が50torr以上の場合, および意識状態など全身状態が良好である場合に離脱率の改善が認められた. また呼吸不全例の生存期間の検討では非離脱群29±42日 (平均±SD) に対し, 離脱群162±110日と有意に延長が認められたことから, 肺癌の呼吸不全に対し, 適応を選んで積極的治療を行うべきであると考える.