日本肘関節学会雑誌
Online ISSN : 2434-2262
Print ISSN : 1349-7324
Ⅲ. 外傷・外傷合併症
橈骨頭脱臼に尺骨頭脱臼を認めた一例
中村 恒一磯部 文洋宮澤 諒
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2022 年 29 巻 2 号 p. 81-84

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抄録

 外傷時のX線画像で橈骨頭脱臼,尺骨頭脱臼を認めた症例を経験したでの報告する.症例は70歳男性.屋根から落下し手をついて受傷.X線画像で右橈骨頭脱臼,尺骨頭脱臼を認めた.橈骨頭のドーム状変形,尺骨の弯曲変形を認めたため,陳旧性橈骨頭脱臼に,骨間膜の破綻と尺骨頭脱臼を生じたものと診断した.人工靱帯による骨間膜の再建,TFCC縫合術を行った.橈骨頭の整復は行わなかった.術後経過は良好である.通常,今回のような受傷機転ではEssex-Lopresti脱臼骨折を呈することが多い.今回,受傷時の橈骨頭の形状,尺骨の弯曲,上腕骨遠位の形状から陳旧性の外傷性橈骨頭脱臼もしくは先天性橈骨頭脱臼がもともとあり,それに手をついたことにより遠位橈尺関節,骨間膜の破綻をきたし,橈骨頭脱臼に尺骨頭脱臼を合併した状態に至ったと考えられる.外傷前には症状が全くなかったことより,骨間膜と遠位橈尺関節の再建のみを行った.

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© 2022 日本肘関節学会
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