2020 年 8 巻 3 号 p. 268-274
壊死性筋膜炎は主に下肢に発生する重症皮膚軟部組織感染症で,高い死亡率を特徴とするが,頭頸部領域での発症は比較的少なく耳鼻咽喉科医が日常的に遭遇することは稀である.今回われわれは急性扁桃炎を契機に発症したと考えられる壊死性筋膜炎の症例を経験した.初診時には頸部蜂窩織炎の診断で保存加療を開始し,壊死性筋膜炎の診断に至るまで3日を要した.その後は急速に体幹方向に進行する壊死に対し,抗菌薬投与・高気圧酸素療法に加えて複数回の切開排膿・デブリードマンなどの集学的治療を行い,救命することができた.壊死性筋膜炎の診断・治療は経験が少ない医療者にとっては困難であることが多いが,早期診断と広範な外科的処置の介入が重要とされる.疾患の臨床上の特徴を十分に理解し,適切な検査・処置を行う事が肝要であるが,診断に迷う場合は検査所見を活用したスコアリングシステムなどの補助診断ツールを駆使することも選択肢である.