日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
Online ISSN : 2435-7952
症例報告
COVID-19関連のイベントが契機と考えられた小児心因性咳嗽
増田 佐和子臼井 智子
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2023 年 3 巻 4 号 p. 163-167

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抄録

心因性咳嗽は何らかの心理的因子によって生じる疾患で,小児に多い。我々はCOVID-19に関連するイベントが契機と考えられた10代の心因性咳嗽3例を経験した。症例1は13歳男子,主訴は咳嗽である。COVID-19罹患後に咳嗽が持続し登校できず,内科などを経て4ヵ月後に当院小児科から当科を受診した。咳嗽は乾性で食事中や睡眠中は出ず,問診中も軽い乾性咳嗽を繰り返していたが喉頭内視鏡検査中は止まっていた。器質的異常を認めず心因性咳嗽と診断し,2ヵ月後に改善した。症例2は心因性咳嗽の既往のある11歳女児,症例3は13歳男子で,いずれも2回目のCOVID-19ワクチン接種後から出現,持続する咳嗽を主訴として接種44日目に小児科より受診した。症例2は軽い乾性咳嗽,症例3はオットセイの声様の乾性咳嗽で,いずれの咳嗽も睡眠中は出ず,問診中は出ていたが内視鏡検査中には出なかった。症例2は心因性咳嗽,症例3は喘息と心因性咳嗽の合併と診断し,それぞれ3ヵ月後,6ヵ月後に改善した。症例1ではCOVID-19罹患による咳の条件付けや後遺症に対する不安が,症例2,3は長引く咳の原因となる既往症や合併症に加えてワクチンの副反応に対する不安が,心因性咳嗽を引き起こした可能性がある。いずれも耳鼻咽喉科と小児科で器質的疾患を否定し,本人と家族に本症の機序などを説明した結果,予後は良好であった。COVID-19が小児にもたらす不安にも留意して複数の診療科により心因性咳嗽の診療にあたる必要がある。

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© 2023 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
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