情報通信政策研究
Online ISSN : 2432-9177
Print ISSN : 2433-6254
ISSN-L : 2432-9177
論文(査読付)
デジタルプラットフォーム規制における透明性に関する規定の検討
-EU法と日本法の比較を通じて
鈴木 康平
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2021 年 5 巻 1 号 p. 145-166

詳細
抄録

本稿では、EU法(一般データ保護規則(GDPR)、オンライン仲介サービスの公正性・透明性の促進に関する規則、デジタルサービス法案)と日本法(個人情報保護法、デジタルプラットフォーム取引透明化法(透明化法))との比較を通じて、デジタルプラットフォーム(DPF)規制について、透明性という観点から検討を行った。EU法と日本法とを比較し、論点として、①個人情報保護法における透明性に関する基本原則と一般的なルールの不在、②アルゴリズムによる自動処理の透明性、③透明性レポートを挙げた。

第1の論点は、個人情報保護法における透明性に関する基本原則と一般的なルールの不在である。GDPRの透明性に関する一般的なルールにおいて、個人データの利用目的の適法化根拠を明確にすべきとされており、GDPRの適法化根拠の一つに「同意」がある。GDPRにおいて同意は、透明性の原則に則った厳格な要件を満たしたもののみが有効であるとされている。個人情報保護法において適法化根拠の代表として同意が用いられていることからすると、GDPR以上に同意の有効性に関する明確なルールが必要と考える。また、GDPRが透明性の原則から有効な同意の要件を導き出していることからすると、個人情報保護法にも透明性に関する基本原則や一般的なルールを定めることが必要と考える。

第2の論点は、DPFで利用されるアルゴリズムによる自動処理の透明性である。EU法では、アルゴリズムによる自動処理に関して、決定を左右する主なパラメータや相対的に重要である理由の開示が義務づけられている一方、個人情報保護法にはそのような開示義務自体がなく、透明化法には主なパラメータの開示義務はあるものの、その理由の開示義務はみられない。個人情報保護法、透明化法ともに主なパラメータやその理由の開示を強化する必要がある。また、開示されたパラメータが本当に重要なものなのかを判断するために、必要な場合には、個人情報保護委員会や経済産業省に対してアルゴリズムを開示することをDPF提供者に義務づけることを、営業秘密とのバランスも加味して今後検討すべきである。

第3の論点は、透明性レポートである。透明性レポートの提出が義務づけられる対象について、DSAは規模の大小にかかわらずすべてのDPF提供者が対象であるところ、透明化法は対象となるDPFを政令で定めることとしており、透明性の確保と競争促進のバランスを保ちやすいと考えられる。一方、報告事項については、DSAはDPFの規模等に応じて強弱をつけているのに対し、透明化法は一律となっており、透明化法が規制対象を広げる場合には、透明化法に関する指針を用いて報告事項の強弱を設けることが望ましい。

著者関連情報
© 2021 総務省情報通信政策研究所
前の記事 次の記事
feedback
Top