2020 年 59 巻 4 号 p. 373-383
本研究は乳幼児期の粗大運動発達がおくれた自閉スペクトラム症(以下,ASD)児の特徴について明らかにすることを目的とした.対象は,運動のおくれを主訴に理学療法の適応となった発達指数または知能指数が70以上のASD児17名とし,粗大運動発達の獲得時期と順序,みられた特徴を診療録より調査した.結果,粗大運動発達の獲得には,①全体的に獲得時期がおくれる,②獲得順序が逆転する,③座位や手膝這いの獲得はおくれたが歩行獲得はおくれない,④シャフリングの4つのパターンが示された.特徴は,手足の過敏や足への荷重を嫌がるなど感覚の問題,こだわりや新奇不安などASDの兆候が乳幼児期よりみられ,運動獲得のおくれへの影響を推測した.これらより,乳幼児期の運動発達がおくれる児のうち,感覚の問題,こだわりや新奇不安がみられる場合,早期からASDの特性を視野に入れた児に合わせた関わりを取り入れることが,運動発達の支援において必要である.