天気
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論文
地上観測および衛星データに基づく,中部山岳域における夜間の雲海発生傾向
小林 勇輝上野 健一
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2021 年 68 巻 8 号 p. 371-389

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抄録

 長野県富士見パノラマスキー場を利用した暖候期3年間にわたる定点カメラ・地上気象観測により,八ヶ岳山麓における雲海の発生傾向と,発生日の山岳斜面に沿った局地気象の特徴を明らかにした.雲海には大規模雲海・東側・西側の3つの形態が存在し,大規模雲海は早朝に高頻度で観察される一般的な雲海であり,西側に偏る小規模雲海は大規模雲海の未発達なもの,東側に偏る小規模雲海は地形性滑昇雲であることが示唆された.定点カメラの画像とひまわり8号の夜間雲解析RGB画像を利用して,中部山岳域スケールで夜間下層雲の空間分布を経験的に検出するアルゴリズムを構築し,暖候期の本州中部における下層雲発生頻度分布を把握した.その結果,発生頻度は山岳域の谷沿いや内陸の地域で高く,海上や沿岸地域および標高2000mを超える地域で低いことが明らかとなった.下層雲の平均発生頻度が特に高かった12領域を特定し,6領域以上で雲海が発生した広域雲海発生日の67%で総観規模の高気圧に伴う沈降性逆転層の出現が高層気象データから確認された.富士見高原における2高度の定点カメラ画像から求めた大規模雲海の雲頂高度は,沈降性逆転層の高度とおおむね一致した.以上から,中部山岳域の山間部で早朝に発生する大規模雲海には,夜間の放射冷却とともに,総観規模の高気圧に伴う沈降性逆転層の存在が重要であることが示唆された.

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