2022 年 49 巻 1 号 p. 16-19
症例は68歳男性.腎機能障害の精査中に,CTで左腎の3.8 cmの腫瘍と気管支分岐部リンパ節転移を認めた. 腎腫瘍生検の病理組織診断は淡明腎細胞癌であった. 画像診断と併せて,左腎癌cT3aN0M1と診断した. 全身治療として,イピリムマブとニボルマブの併用療法を開始したが,4コース終了後に免疫関連有害事象と考えられる副腎不全Grade 3を発症したため,免疫チェックポイント阻害薬の投与を中止した. イピリムマブ・ニボルマブ投与終了後,転移巣は消失,原発巣は1 cmに縮小した. 治療開始7ヶ月後に左腎部分切除術を施行し,完全寛解を得た. 治療開始前より腎機能障害を認めていたが,治療開始26ヶ月時点で,腎機能の悪化を認めず,再発なく経過している. 慢性腎不全を合併した転移性腎細胞癌症例に対して,免疫チェックポイント阻害薬および腎部分切除術により,腎機能を低下させることなく,完全寛解を得ることができた.