2021 年 72 巻 4 号 p. 204-210
小児に対する気管切開術はその手術手技だけでなく,術後のカニューレ管理についても問題となる。特にカニューレトラブルの際に適切に,そして素早く対応できるかどうかが重要であり,それができないと重篤な後遺症をきたしてしまう恐れがある。入院中の病棟における対応と退院後の対応でも多少異なるが,カニューレ管理についての指導・教育が中心となる。しかし実際に,有事の際に適切な対応ができるかと言われると疑問が残る。過去にわれわれは,縦切開で気管切開術を施行した小児症例で,カニューレ事故抜去後の再挿入困難・誤挿入を経験している。この苦い経験を踏まえ,長期にわたるカニューレ管理が必要となる症例に対して,Fee-Ward法を用いた気管開窓術をおこなっている。開窓することによってカニューレ事故抜去時のカニューレ再挿入を,誰でも安全かつ簡便に施行できるようにし,トラブルを最小限に抑えることができた。今回われわれは,当科で気管切開術を施行した小児115例を後方視的にまとめ,カニューレ管理という点に着目して報告する。