2017 年 68 巻 3 号 p. 240-244
食道穿孔を疑った,Zenker憩室に嵌入した魚骨異物症例を経験したので報告する。症例:52歳の男性。鯛のあら炊きを食べた後に咽頭痛が出現し,当院の救急外来を受診した。咽頭喉頭に異物を認めず,翌日CTにて頸部食道に食道壁外へ突出する魚骨を疑う高吸収域と,頸部気腫像を認めた。上部消化管内視鏡にて魚骨を摘出したが,異物による食道損傷を確認した。食道穿孔の可能性を疑い,頸部外切開による手術治療を行った。頸部膿瘍はみられず,術中造影にてZenker憩室と診断,憩室摘出術を施行した。術後嚥下障害はなく,経過良好である。異物誤飲においては,食道憩室への異物陥頓の可能性を念頭におく必要があり,また個々の症例に応じて,治療方法を考慮する必要がある。