日本気管食道科学会会報
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原著
甲状腺葉峡部切除後の甲状腺機能低下症のリスク因子の検討
藤田 紘子坂本 耕二上野 真史石川 徹新田 清一小川 郁
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2017 年 68 巻 3 号 p. 228-234

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抄録

背景:甲状腺腫瘍に対して甲状腺葉峡部切除術を行った症例の一部では,術前のTSH値,FreeT4 (以下FT4) 値が基準値内であっても術後に甲状腺機能低下をきたすことがある。これらの症例では一生涯甲状腺ホルモン剤の内服が必要となり,患者の負担となる。術前に術後の甲状腺機能低下が予測できれば患者への術前説明の一助になる。今回われわれは甲状腺腫瘍に対して甲状腺葉峡部切除術を行った症例の術後甲状腺機能低下に対する予測因子につき検討した。対象と方法:甲状腺葉峡部切除術を行った症例のうち,術前TSH値,FT4値が基準値内であった170例において術後TSH値,FT4値の変動に影響を及ぼす因子を検討した。結果および考察:性別,年齢,病理学的所見,抗甲状腺抗体陽性の有無と術後TSH,FT4低下との間で有意な相関は認めず,術前TSH値,FT4値との有意な相関を認めた。特に術前TSH<2.0 μU/mlでは90%の症例で術後TSH値,FT4値が基準値内であるのに対し,術前2.0≦TSH≦5.0 μU/mlかつ,術前FT4≦1.0 ng/dlの場合では71%で術後FT4値が基準値未満となり甲状腺ホルモン補充療法を要する可能性が示唆された。

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