日本気管食道科学会会報
Online ISSN : 1880-6848
Print ISSN : 0029-0645
ISSN-L : 0029-0645
症例
妊娠に伴って音声の変化をきたした2症例
田村 悦代新美 成二和田 吉弘飯田 政弘
著者情報
ジャーナル 認証あり

2016 年 67 巻 4 号 p. 278-282

詳細
抄録

妊娠による音声の変化は妊娠性喉頭障害として,分娩後に軽快するのが特徴であるといわれている。今回われわれは,妊娠に伴って話声位が著しく低下し,分娩後も改善しなかった2症例を経験した。症例1 : 33歳。妊娠3カ月ごろより声が低くなったとして受診した。初診時,話声位は127 Hz,声域は118~511 Hzで,明らかな器質的病変は認められなかった。男性ホルモンの検査で,テストステロンは正常範囲であったが,アンドロステロンは正常の約2倍の値を示した。1年後には月経が再開し,話声位は152 Hz,声域は141~555 Hzに変化した。また,アンドロステロンの値も減少し,正常範囲に近い値となった。その後,再度,妊娠・出産をしたが,話声位に変化はなかった。症例2 : 35歳。妊娠6カ月ごろより声が低くなったとして受診した。初診時,話声位は133 Hz,声域は82~606 Hzであった。いずれの症例も,積極的な治療の希望はなく,経過観察中である。声域は,2症例とも30半音程度あり,正常範囲であったが,話声位が低下し声域下限よりに偏移し,発声時に声区変換付近の不安定さがあるなど,ホルモン音声障害による男性化音声と似た症状と考えられた。

著者関連情報
© 2016 特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top