2012 年 63 巻 6 号 p. 460-465
甲状腺乳頭癌において,腫瘍が喉頭外筋へ浸潤し,喉頭外において反回神経末梢端が同定できず,喉頭内での再建を余儀なくされた症例を経験した。症例は86歳女性で,前頸部腫脹と嗄声,咳嗽などの呼吸器症状を主訴として当科を受診した。初診時に甲状腺左葉を占拠する腫瘍を認め,左声帯麻痺を伴っていた。細胞診にてクラスV,乳頭癌疑いであり,甲状腺左葉摘出術,D1郭清を施行した。術中,腫瘍の浸潤により反回神経の末梢端を喉頭外で確保できず,甲状軟骨を一部鉗除して喉頭内で反回神経の末梢端を同定し,頸神経ワナを用いて中枢端と間置移植した。術後時間経過とともに声帯の緊張も増し音声状態も改善傾向にある。喉頭外で反回神経末梢端を確保できない場合でも,喉頭内操作にて神経末梢端を同定し,神経再建を試みることは,喉頭枠組み手術などの二期的な音声改善手術同様有効な手法であると考えられた。