日本気管食道科学会会報
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原著
喉頭枠組み手術における無挿管全静脈麻酔の有用性
中村 一博吉田 知之武藤 孝夫鈴木 伸弘渡邊 雄介渡嘉敷 亮二鈴木 衞
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2005 年 56 巻 6 号 p. 476-483

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抄録

喉頭枠組み手術 (甲状軟骨形成術, 披裂軟骨内転術) では術中の音声モニタリングを施行することが望ましいことから, 主に局所麻酔が選択されてきた。しかし, 術中の音声のモニタリングは不可能であるが, 気管挿管による全身麻酔下に披裂軟骨内転術を施行している施設もある。
今回われわれは喉頭枠組み手術に無挿管自発呼吸下での全静脈麻酔 (total intravenous anesthesia : TIVA) を用い, 良好な術中音声モニタリングと術後音声が得られたのでここに報告する。
症例は2002年12月から2005年4月までに東京医科大学八王子医療センター耳鼻咽喉科頭頸部外科において喉頭枠組み手術を施行した14例である。
TIVAでは鎮静薬としてプロポフォールを, 鎮痛薬としてペンタゾシンを用い, 麻酔深度の指標にはbispectral index (BIS) モニターを使用した。前投薬は投与しなかった。入室後ペンタゾシン15~30 mg/bodyを静注, プロポフォール10 mg/kg/hrの静脈内持続投与を開始し, 無挿管自発呼吸下で意識消失させた。入眠後, プロポフォール4~6 mg/kg/hr持続投与で麻酔を維持した。声帯を内転させる際にプロポフォールの持続投与を中止し, 覚醒させ発声させた。発声させながら声帯の位置決めをした後, 再びプロポフォール持続投与を開始し意識を消失させ, 閉創した。
14例全例において良好な術中管理と術後音声が得られた。プロポフォール持続投与中のBIS値は60前後であったが, プロポフォール投与中止後226±66秒でBIS値は全例90以上となり, 術者との声帯位置決めの会話も鮮明に記憶していた。全例において術中の疼痛の訴えはなかった。術後, 最長発声持続時間 (maximum phonation time : 以下MPTと記す) は全例改善した。
無挿管自発呼吸下TIVAによる麻酔は, 従来の気管挿管による全身麻酔と局所麻酔の長所を兼ね備えた麻酔法であり, 術中覚醒下の音声モニタリングが必要な喉頭枠組み手術に有用である。

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