深頸部蜂窩織炎へと進展した甲状腺腫瘍内出血の1例を経験したので報告した。症例は48歳の女性で発熱, 前頸部の疼痛と腫脹, 呼吸困難を訴え, 亜急性甲状腺炎の疑いにて紹介受診した。エコーとFNAにて甲状腺嚢胞性腫瘍内に血腫が認められた。CTとMRIでは前頸部皮下組織は蜂窩織炎のため著明に腫脹しており, 気管は腫瘍によって右側へ圧排されていた。甲状腺腫瘍内出血および深頸部蜂窩織炎と診断し, 保存的治療を行ったが症状の改善が認められず, 気道閉塞, 深頸部感染症の悪化による縦隔炎が懸念されたため甲状腺左葉切除術と頸部ドレナージ術を行った。術後, 炎症は速やかに消退し, 合併症を起こすことなく術後9日目に退院することができた。