日本気管食道科学会会報
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症例報告
間接的機能訓練が有効であった聴神経腫瘍術後嚥下障害の1症例
小泉 千秋伊藤 裕之冨田 昌夫前田 淳一
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2004 年 55 巻 6 号 p. 461-467

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抄録

症例は,聴神経腫術後に嚥下障害をきたし,嚥下障害に対する機能訓練を行ったが改善せず,当院に転院した20歳の女性である。右外転神経,舌咽神経,迷走神経麻痺を認めた。咽頭食道透視検査で誤嚥が確認された。経鼻的栄養管留置を自己挿入に変更した。頸部筋群は常に過緊張状態,坐位姿勢では,腹部前面筋群の筋緊張低下,背部筋群の過剰な筋緊張による伸展位の固定が認められた。頸部と体幹の筋緊張の改善を目的に,全身の間接的機能訓練を行い,頸部の過緊張は軽減し,姿勢が安定した。直接的機能訓練には,ゼリーを用い,頸部回旋嚥下法により,ゼリーの残留量が最も少なかった咀嚼回数5回で嚥下させた。1回ずつ確実に嚥下することを指導し,1回の嚥下ごとに下咽頭残留物を喀出させて,残留の有無を確認した。体幹や四肢の異常は,嚥下障害に大きな影響を与える。安定した姿勢を獲得するための間接的機能訓練が重要である。十分な間接的機能訓練行った後に,直接的機能訓練を行うべきである。直接的機能訓練の際には,食餌摂取時の姿勢や嚥下の仕方の変化に本人が気づき,変化を自己修正する指導も重要である。

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