日本気管食道科学会会報
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特集:胃食道逆流症(GERD)と気管食道科領域疾患
小児科領域における胃食道逆流症と呼吸疾患
位田 忍
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2003 年 54 巻 5 号 p. 352-357

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抄録

胃内容物が食道に逆流する現象を胃食道逆流現象(gastroesophageal reflux: GER)という。GERは健常者でもある生理的なものであるが,逆流により逆流性食道炎,繰り返す肺炎,体重増加不良などを伴う場合は,胃食道逆流症(GER disease: GERD)と呼ばれ,治療の対象となる。小児科領域において,臨床上しばしば遭遇する疾患群である。GERの症状は主として嘔吐などの消化器症状であるが,発生学的に食道と気管は共通原基より形成され,解剖学的にも下咽頭を共有しているため,呼吸疾患との合併がありうる。反復性(嚥下症)肺炎,気管支喘息,乳児の無呼吸発作などの呼吸疾患とGERの関係について検討した結果,これまでの報告同様に,呼吸器症状を呈する乳幼児の多くにGERを認めることが確認された。上気道の閉塞は,その治療でGERが軽快することより,GERの増悪因子であることが示唆された。上気道の閉塞に伴い吸気時に食道が陰圧になることでGERを起こしやすくしていることが推測される。GERDの治療にあっては,気道の形態および機能評価を同時に検索を進めていく必要があり,逆に慢性の呼吸器症状を呈するときにはGERの検索も行っていくことも大切である。

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