2019 年 16 巻 4 号 p. 217-221
大腸癌手術での機械的腸管前処置(mechanical bowel preparation:MBP)について,周術期管理の見直しを行う過程で,術前MBPを順次省略・変更することを行ったので,その成績につき大阪医療センターでの経験を報告する。第1期(全症例MBPなし)では手術部位感染(surgical site infection:SSI)は19例中7例(36.8%)であった。第2期(直腸のみグリセリン浣腸)では,17例中3例(17.6%)であった。ともに直腸癌症例で縫合不全を発症し重篤化した。第3期では直腸癌症例にMBPを開始したところSSIを認めなかった。しばらく継続して症例を重ねると,第3―5期(直腸にMBP)ではSSIは125例中14例(11.2%)であった。重篤な合併症はなかった。結腸癌症例ではMBP省略が可能と考えられる一方で直腸癌症例では,縫合不全など合併症を併発すると重篤化することがあり,MBPは必要と考えられた。