イノベーション・マネジメント
Online ISSN : 2433-6971
Print ISSN : 1349-2233
研究ノート
フード・バリューチェーンにおける第二レイヤーアクターの役割
―大隅テリトーリオの事例から―
木村 純子二階堂 行宣佐野 嘉秀藤本 真
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2024 年 21 巻 p. 127-147

詳細
抄録

本稿は、農水産物をもとに食品の価値を生み出す流通プロセスをフード・バリューチェーンとして捉え、農水産物の生産を起点とする地域発展のモデルを導出する。フード・バリューチェーンの中で重要な役割をはたすアクター(当事者)として、地域の複数の農水産物生産者から直接、農水産物を仕入れ、加工等を行い、国内外の市場に向けた流通に乗せる事業者・組織に焦点を当てる。彼らは、農水産物の生産者である第一レイヤーと直接取引関係にある第二レイヤーに位置するアクターである。イタリアに見られるようなテリトーリオ戦略を日本にそのまま適用することは難しいが、2次産業の地元中小企業が中心となって、農家の自律を助け、農村の持続可能性を実現していることが考えられる。第二レイヤーのアクターは、地域の共有財である農水産物を活用したフード・バリューチェーンを自発的に力強く支える当事者となりうる。すなわち、第二レイヤーのアクターが、経済的利益の確保に向けて地域の農水産物生産者とのあいだに互酬的な取引関係を築くことで、国内外の消費者に向けて価値ある食品を安定的に流通させられる。また、フード・バリューチェーンの安定的な継続を背景に、第一・第二レイヤーの生産者や事業者・組織が、地域の農水産物資源の価値を再認識することで、互酬的取引関係がより強固となり、地域ブランドの価値向上や、商品を超えた地域アイデンティティの共有につながる場合もある。

著者関連情報
© 2024 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
前の記事 次の記事
feedback
Top