中小企業の対外直接投資が珍しくない時代となった今、グローバル人材が不足しがちで、さらに確保、育成するための資金が十分でない中小企業は、どのように海外子会社へ組織文化を移転させることができるのであろうか。人材面のみならず、中小規模ならではの独自の組織マネジメントを探るべく、調査対象企業におけるインタビュー結果についてSCATを用いて分析したところ、海外子会社に国内本社の意向を押しつけず、国内本社と並列に扱うことで一体感を生み出し、海外子会社への知識移転と、海外子会社での創意工夫も両立させていた。これらは大企業の規模では難しく、中小企業に優位な組織文化移転の組織マネジメントである。海外子会社を国内本社の延長線上にある一部門と見なす組織体系が組織文化を移転しやすくさせていた。また、海外子会社に長く勤務する現地社員が組織文化移転における実践コミュニティのブローカー役を担い、海外子会社の組織文化を維持、継続させていた。