Papers in Meteorology and Geophysics
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混濁大気内の天空光の角度分度の研究(序報)
嘉納 宗靖
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1959 年 9 巻 3-4 号 p. 163-171

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抄録

種々の混濁度をもつ混濁大気中における赤外部(8000Å)の天空光の角度分布を一次散乱を基として計算した。計算は大気中のaerosol particleの粒度分布を考慮に入れた一種の階段型分布を用いて,太陽を含む垂直面内の天空光の角度分布とscattering functionとについて行つた。結果は次の通りである。
太陽の極く近傍(太陽からの角距離<5°)では天空光の強度は著しく強く,そこでは大きな粒子(α=2πα/λ>8)が天空光の強さにおもに寄与し,近接領域(5°~20°)では中程度の大いさの粒子(4<α ≦8)がおもに役割を演じ更に中間領域(20° ~60°)および遠隔領域(>60°)ではそれぞれ小さな粒子(α ≦4)および空気分子が天空光の分布におもに寄与する。各粒子の寄与する範囲は混濁度によつて違い,混濁度が大きくなるにつれて粒子の寄与する範囲は大きくなり,従つて空気分子のそれは小さくなる。又Anthonyの山上(5415ft.)での結果と比較するために,種々の混濁度に対する(地上での混濁度が2.33,4.66,および6.99の場合に対応する),scattering functionを計算した。その結果,混濁度の大きい程scattering functionの勾配は大きく,計算したものの中では,混濁度の大きい場合のscattering functionがANTHONYの結果と比較酌一致しているが,この一致も中間領域ではよくない。これは多分ANTHONYの場合の粒子の粒度分布が混濁大気の平均状態のそれと異つていることから生じていると思われる。

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© 気象庁気象研究所
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