Papers in Meteorology and Geophysics
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一般流の周期性と緯度間の相互関係
藤田 敏夫
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1959 年 9 巻 3-4 号 p. 131-140

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抄録

一般流の時間的変動の性質を最近の二冬について調べた。最近,一般流を数値的に予報しようとする試みがあるが,一カ月程度の予報となると,なお困難である。ここでは時間的変動の中でも長周期変動を対象とするために,5日平均のデータを用いた。季節変動からの偏差のイソプレツトを調べると,両年とも,特に1956~1957年の冬は,“Southerly trend” が明瞭に現われている。一例として1957年の1月中の顕著なtrendの際の気圧配置の変化を,流れの場を参照しながら考察すると,一月中旬に太平洋と大西洋にプロツク高気圧が出現し,極東とヨーロツパで偏西風の最強軸が南下している。このようにして,southerly trendが起つていることが,他の場合にも認められた。これらの関係は緯度間の相互相関係数の分布にも認められる。すなわち,ある緯度における一般流に対して,一単位前の高緯度の一般流は常に正の相関を持ち,低緯度とは常に負の相関を持つことが示される。
次に,各緯度における一般流の周期性をスペクトル密度函数で推定したところ,中緯度では約25日位の周期が現われ,高低緯度ではそれよりいくらか長い周期が認められる。一方P.D.THOMPSONは一般流の変動の本質的性質が所謂電信方程式で表わされ,波動解を持つことを発表している。われわれの場合は長周期を対象としているから,大規模な擾乱から期待される一般流の周期を求めればよい。こうして求めた周期の平均はSpectrurnから推定された値とよく一致している。かくして,従来のようにペリオドグラムから推定した周期は永続的周期と理解すべきではなくて,ν2によつてその長さが時間と共に変化する輪廻的な周期と理解すべきことが分った。

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© 気象庁気象研究所
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