日本重症心身障害学会誌
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O-7a-03 喉頭気管分離術後に空気嚥下による腹部膨満から消化管穿孔に至った1例
石井 雅宏
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2021 年 46 巻 2 号 p. 252

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抄録

緒言 重症心身障害児(者)において、反復する誤嚥性肺炎の対応として、喉頭気管分離術の有効性は広く知られており、頻用されている。しかし、空気嚥下症を引き起こし、摂食等の問題になることも知られている。多くの場合は一過性の現象でその間は用手的脱気等により対応できるが、今回短時間で著明な腹部膨満を来し、消化管穿孔で緊急手術なった一例を経験したので報告する。 症例 片側巨脳症を原疾患とする最重度精神運動発達遅滞、症候性てんかんで当科フォロー中の20歳男性。誤嚥性肺炎で当院入院した。入院後呼吸状態が悪化したため気管内挿管と人工呼吸管理を行った。その後呼吸状態が改善したため抜管を試みたが抜管後数時間で呼吸不全に陥るため再挿管を行った。誤嚥性肺炎反復のリスクを考慮し、X月Y日喉頭気管分離術を施行した。術後呼吸器を装着し経過を見ていたが、術中に挿入した気管カニューレの安定性が悪く、一回換気量が時折低下していた。そのためY+23日15時に他社製のカニューレに交換した。その後から苦悶様表情が出現したが一回換気量の低下は認めずバイタルサインも安定していたため経過を観察していた。18時ごろに腹部膨満と顔色不良が出現した。呼吸器設定の変更で状態改善を試みたが変化なく、20時に発熱、21時にはショック状態になった。腹部造影CT検査でフリーエアーと腹水を認めたため消化管穿孔疑いで緊急手術になった。開腹し盲腸部の穿孔を認めた。 考察 カニューレ交換の直前までは全身状態やバイタルサインも安定しており、交換後の違和感から多量に空気を嚥下し、それにより急速に消化管の内圧が高まり、消化管で最も圧に弱い盲腸部が穿孔したと考えられた。 Take home message 喉頭気管分離術後の重症心身障害児(者)で、空気嚥下症から重篤な状態に短時間で陥る可能性もある。

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