日本重症心身障害学会誌
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O-1-F08 重症心身障害児(者)に対する聴覚評価の試み(2)
岡本 敦子中沢 真実根本 純子中山 陽子加我 牧子
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2018 年 43 巻 2 号 p. 285

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抄録

はじめに 重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の聴力評価のため、他覚的検査である歪成分耳音響放射検査(以下、DPOAE)を実施し、一部対象者で、聴性脳幹反応検査(以下、ABR)と比較し、重症児(者)におけるDPOAEの課題と有効性について検討した。 方法 当センター入所者で、同意と主治医の許可を得た79名を対象とした。DPOAE測定にはER60スクリーナー(RION)を用い、Noise値が大きかった26名はILO292(RION)にて再検査を行った。検査は介助者と共に2名で実施した。測定に際し、検査測定回数、環境騒音の他、測定に影響したと考えられる要因を記録した。ABRは2018年5月までの11年間に当センターで実施した28名の記録を参照した。 結果 DPOAEはPass34名(43%)、Referが33名(42%)、測定不能が12名(15%)であった。対象者のうち14名は姿勢や外耳道の疾病のため片耳のみ施行出来た。両耳を測定出来た65名のうち、左右差を認めた者16名、いずれかが測定不能であった者が14名であった。対象者79名中54名は検査に際して何らかの阻害要因が認められた。Noise値に関連する要因は呼吸音、発声、呼吸器の機械音の順であった。他に検査に影響した要因は、体動、唾液嚥下の順であった。DPOAEをPassした34名のうち、ABRを実施した7名中6名は正常または軽度の閾値上昇であり、1名は高音圧でもV波が検出出来なかった。 考察 DPOAEは呼吸や体動など身体的状況の影響を受けやすく、測定不可な入所者も認められた。しかし客観的な聴力検査が簡易に、左右別に測定できる有意義な検査であり、ABRや聴性行動反応聴力検査と比較検討することで、評価自体が困難な重症児(者)の聴覚を介したリハビリテーションへの貢献が大きいと考えられる。

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