日本重症心身障害学会誌
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O-1-F02 バルン式胃瘻ボタンで管理中にボールバルブ症候群による胃穿孔を生じた一例
田中 修一新美 教弘
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2018 年 43 巻 2 号 p. 282

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抄録

症例 14歳、コルネリア・デ・ランゲ症候群の男児。上気道閉塞に対する気管切開および嚥下障害に対する胃瘻管理を行っていた。胃瘻からの漏れに対して約1か月前に開腹術でWitzel法による瘻孔延長の胃瘻再建術を行った。 現病歴 1週間前より上腹部は拡張するが胃瘻から空気が十分吸引できず、また胆汁様の内容が吸引されることもあった。発症前日、腹部膨満が顕著となり近医を受診した。腹部レントゲンで胃拡張を認め、胃瘻からの減圧が行われたが効果なく、経鼻胃管も胃内に挿入できず経過観察された。翌朝に急激な疼痛を訴え不隠となり、CTで腹腔内遊離ガスと腹水を認め穿孔性腹膜炎の診断で当院に搬送され、同日緊急開腹術を施行した。 手術所見 噴門直下の胃体部小弯側で前壁が約3cmにわたって縦に裂けていた。穿孔部の周囲を切除して縫合閉鎖した。胃瘻は、手術時に一旦外していたが、前回作成したWitzel瘻をそのまま用いて同部位に再造設した。 経過 縫合不全や創感染を起こさずに順調に経過し再び胃瘻からの経管栄養が可能となった。術後3週に行った上部消化管内視鏡では幽門直下の十二指腸球部に円形の瘢痕所見を認め本症が胃瘻ボタンのボールバルブ症候群により生じたことが確診された。胃瘻については、胃内開口部は幽門からは離れており、瘻孔は約4cmで噴門側に向かっていた。 考察 予想外の胃の蠕動運動により胃瘻ボタンのバルーンが幽門を通過しボールバルブ症候群を生じ、胃内圧が異常に亢進したことから胃が破裂するに至ったものと推測した。Witzel瘻では一時的に瘻孔が短縮して胃内にチューブの遊びが生じる可能性があると考えられた。特に問題のない位置に造設された胃瘻ボタンあっても本症を発症することがあり、その病態と対処法について十分な啓蒙が必要と思われる。

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