日本重症心身障害学会誌
Online ISSN : 2433-7307
Print ISSN : 1343-1439
一般演題
O-1-H18 耳介褥瘡における穴あき枕の検討 第1報
小林 茜原 希代美中山 拓也坂本 彩有鈴木 奈恵子安藤 加奈子
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 43 巻 2 号 p. 278

詳細
抄録

はじめに 重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))の耳介は、得手体位があることや耳介が変形していることにより、褥瘡になりやすく治癒しにくい部位である。耳介の自然な形状を保持でき、安定感と体圧分散効果をもつ素材の枕ならば、耳介褥瘡を予防することができると考え、穴あき枕を作成した。重症児(者)に使用する前に、安全性を確認する調査を行った。 対象・方法 健康な成人男女15名以上を対象とし、形状・素材の異なる試作の枕で、耳介と耳介周辺の体圧を測定した。得られたデータは褥瘡発生危険圧(>32mmHg)の件数や割合を比較し、統計解析を行った。A病院の看護倫理委員会の承認を受けて研究を開始し、枕の試作は業者の協力を得た。 結果・考察 穴なし枕の調査結果から耳介と耳介周辺の体圧を比較すると、耳介には耳介周辺に比べ高い圧がかかっていることがわかった。得手体位や耳介の変形などの要因をもつ重症児(者)はさらに褥瘡発生の危険度が増す。よって、耳介の自然な形状を保持するために穴をあけておくことは重要である。さらに穴あき枕と穴なし枕の調査結果を比較すると、耳介周辺の体圧は穴あき枕の方が高かったが、統計解析の結果では側頭部以外では有意差はなかった。支持面積を広く取った設計としたことで体圧分散されたと考える。一方で側頭部では穴あき枕で有意に体圧が高かった要因は、調査時に枕が低かった可能性が考えられる。穴あき枕を安全に使用するためには適切な高さで使用することも重要であると考えられる。素材に関しては、より柔らかく反発が小さい素材で体圧が低く、体圧分散効果は高いと考えられる。今後、重症児(者)への適応や実用性について、重症児(者)の協力を得てさらに調査していく。

著者関連情報
© 2018 日本重症心身障害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top