2013 年 6 巻 p. 75-83
本研究では萬福直清の文献を基に明治後期における小学校理科の動物解剖の位置づけを生体解剖されうる動物の種類と目的及び生命尊重の観点から分析し明らかにしたものである。結果としては、生体解剖をして内部の様子を観察しうる可能性がある動物として、二枚貝としてカラスガイ或いはハマグリ、シジミ、魚類としてフナやコイなど、両生類としてカエル、鳥類としてニワトリ、哺乳類としてウサギが示されていた。また当時の教科書としては明治43 年の児童用教科書には記載がないが、教師用書の中には二枚貝、イカ及びフナは観察事項として位置づけられていた。生体解剖の目的としては二枚貝、イカ、フナはそれらの動物そのものを知るための手段として、ウサギやニワトリは人体の理解の手段として解剖される可能性があることがわかった。また生体解剖において生命尊重に対する配慮はみられなかった。これはこの当時の自然に対する知識観が反映している可能性があることを指摘した。