本研究は、保育士による母親への育児理解や多重役割理解が、育児ストレスを媒介してマルトリートメントに与える影響を検討した。調査は、2013年6月~7月にかけて、A県の保育所696カ所を対象に依頼を行い、保育所に通う子どもの母親に対して自記式の質問紙調査を実施した。得られた回答のうち、104 カ所、2,634件を本研究の分析対象とした。分析の結果、多重役割理解から育児不安感に有意な負の影響、育児理解から育児不安感と育児負担感に有意な負の影響が見られた。また、育児不安感と育児負担感からマルトリートメントに有意な正の影響が見られた。これらから、保育士による母親への育児理解や多重役割理解は、育児ストレスを媒介してマルトリートメントを軽減していることが示唆された。