2020 年 58 巻 p. 8-24
近年、アーティストが市民と協働創作を行う「コミュニティ・アート Community Art」の
実践がさかんに行われている。
美術分野などと同様に、音楽においても、ハイ・アート、クラシック音楽といった鑑賞の
対象として存在する芸術ではなく、一般市民が能動的に演奏、創作行為に参加し、その実践
プロセス自体に価値を見出すコミュニティ・アートとしての音楽、すなわち「コミュニティ・
ミュージック」が少しずつ広まりつつある。
本論では、2014 年から始まった豊中市主催の「世界のしょうない音楽ワークショップ」
の 5 年間の実践内容をもとにコミュニティ・ミュージックの可能性と課題を論じる。作曲
家とプロの音楽家が一般市民と 50 名以上のオーケストラを編成し、毎年、新たな創作作品
を舞台で演奏する試みは、世界的にも希有なものである。