2014 年 52 巻 p. 31-42
Truman Capoteの小説The Grass Harpに描かれる様々な空間の属性は、その場所に移動して滞在する登場人物たちの属性と密接に関わっている。例えば、Talbo家の住まいにある屋根裏部屋は、中心としてのVerena Talboの部屋とは対照的に周縁的な空間に位置している。同様に、家を出て行ったDolly TalboとCollin Fenwick、Catherine Creekが避難する樹の家も、町の周縁にあり、それらの空間の属性に相応するように、彼らは周縁性や漂泊性、異人性を抱えた人物として描かれている。 こうした空間の分析は、中心/周縁をはじめとして、小説のなかに隠された様々な二元的世界や概念を明るみに出し、われわれはDollyこそがその相反する世界を自由に往還する人物であることに気づくのである。