【要約】 2018年1月から2019年5月の1年5カ月間に, 歯科未設置の循環器病院入院中の心臓手術待機患者10症例に対する抜歯時の歯科周術期管理を経験した.
訪問歯科診療による口腔内評価で, 歯周ポケット6mm以上かつ出血を認める辺縁性歯周炎, 急性症状の既往をもつ根尖性歯周炎, 明らかな破折や感染を認める歯牙を感染歯牙と評価した. 外来通院と鎮静薬使用可能な心機能状態と評価された症例は, 当診療所外来で, 静脈内鎮静法下での抜歯を行った. 一方, 重症度の高い心機能状態が持続する症例では, 当該の循環器病院内の病棟ベッド上で抜歯を行った.
周術期の経過を通して, RCRIによるリスク評価には限界があると考えられ, レトロスペクティブにNSQIP, GUPTAを用いて検討を行った. その結果, 必要最小限の抜歯, 外来IVS併用, 処置時間の短縮を念頭に, 症例ごとに管理方針を検討することが肝要であると思われた. さらに, NSQIPとGUPTAにおけるリスク評価3.0%が, 診療形態や, 使用する局所麻酔薬を選択する際の判断基準として有用である可能性が示唆された.