2016 年 8 巻 1 号 p. 93-97
これまでにも繰り返し指摘されてきたことであるが,近年,日本企業における経営スタイル,いわゆる日本的経営に大きな変化が認められ,様々な視点から論じられてきた。本小特集では,日本企業の変化について,ウチとソトの境界がかつてほど明確ではなく,企業ごとの「垣根」が低くなってきたことに注目する。「垣根」が低くなってきた結果,日本企業に広くみられてきた伝統的な「共同体モデル」とは異なる,新たなモデルが今日生じつつあるようにみえる。 本小特集ではその痕跡を二つの現象に求める。一つは,日本企業が2000年代以降にCSR経営へ急速に傾斜していった現象であり,二つには,同じく2000年代になって,グローバル枠組み協定を締結する日本企業および労働組合が出てきたことである。本小特集の3論文は,これら二つの現象の関連に視線を向けつつ,日本企業の変化の性質,意義,可能性を考察する。