社会政策
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中国初期協同組合における救貧事業
―華洋義賑会の合作事業と成員資格の問題―
穐山 新
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2019 年 11 巻 1 号 p. 98-108

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抄録

 互酬性の原則に基づく相互扶助組織は貧窮者を十分に包摂できるのか。本稿は,中華民国期の中国における華洋義賑会の農村信用協同組合(合作社)の事業を事例に,この合作社が貧農の包摂に失敗した背景と経緯を,成員資格の問題に焦点を当てて検討および記述した。第一に,華洋義賑会は合作社の経営を失敗に招く最大の要因が「不良分子」の存在であるという理解の下に,合作社の成員資格を善良な人格者=「好人」に厳しく限定した。これは,自らを「好人」と証明するための農業における実績に乏しい下層の貧農の包摂を,著しく困難にしたと言うことができる。第二に,華洋義賑会は,「不良分子」を招き入れてしまう要因として,情実と体面=「情面」の問題を指摘していた。しかし「情面」は,実際には合作社の設立における重要な契機となっていた可能性が高く,もしそうだとすれば,「情面」が配慮される機会の少ない貧農が,合作社から排除される結果になったと考えられる。

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© 2019 社会政策学会
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