素粒子論研究
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UV輻射場中の銀河形成(基研短期研究会「宇宙における第一世代天体形成」,研究会報告)
須佐 元
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1999 年 100 巻 3 号 p. C114-C117

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抄録

宇宙はz&lsim;5において高度にイオン化されていることはQSO吸収線系の観測から確かな事実である。したがってこのイオン化の原因となるUV背景輻射場の存在もまた疑う余地のないものである。UV輻射場は銀河形成にとくに小さいスケール(M&lsim;10^9M_&odot;)で影響か大きく現れることはよく知られている。ガスはUV輻射場によって加熱され、10^4 K程度に保たれる。したがって銀河の形成時期と思われるz&lsim;10ではガスのジーンズ質量が小さい銀河の質量程度の大ささになってしまい、重力によって収縮することかできなくなるのである。UV輻射場の影響はこれだけにとどまらない。銀河自身の重力収縮の可・不可のみならず、銀可中での星の形成に大きな影響が予想される。銀河形成期のlow metal(Z/Z_&odot; &lsim;10^<-2>)の環境下ではガスの冷却剤は低温(T&lsim;10^4K)で依然として水素分子がになっており、その水素分子はUV輻射場による加熱、及び光解離によって破壊される。一方、銀河の中で星の形成か起きるためには1万度ではジーンズ質量が大きすぎるので水素分子による冷却か不可欠である。したがってUV輻射場は銀河雲中の星形成に影響をあたえる。この影響は小さい銀河にとどまらず、大きな(我々の銀河系程度の)銀河の形成にも大きな影響か予想される。今回の発表ではこの問題について詳細な計算を行った(Section 2).またその計算結果から、UV輻射場に対する透過性によって銀河形成か質的に異なる2つのカテゴリーに分けることかでき、それぞれか散逸的銀河形成と非散逸的銀河形成のシナリオに対応することがわかった(Section 3)。

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© 1999 著者
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