日本保健科学学会誌
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脳機能イメージングで高次脳機能を観る
菊池 吉晃
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2008 年 10 巻 4 号 p. 205-214

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抄録

筆者らは,人間のさまざまな高次脳機能の解明に向けて,機能的磁気共鳴画像法(fMRI)と脳磁界(MEG)による脳機能イメージング研究をおこなっている。MEGを用いた高時間分解能の複数発生源同時推定法によって,選択的注意時の海馬傍回後部を中心とした各連合野の神経活動の精緻な時空間構造をmsecオーダーで視覚化することに成功した。また,図形,文字,手のメンタルローテーションにおける「視覚関連領野⇒運動前野⇔頭頂連合野」の詳細な時空間構造を明らかにした。この神経ネットワークは,視覚誘導性の手操作関連のネットワークと一致する。さらに,手の実操作の視覚遅延条件下におけるfMRI研究から,時間的外乱に対する脳の補償機構を明らかにした。とくに右下頭頂領域は,運動の内部モデルのみならず自他識別の機構とも関連する可能性が示された。最近では,人間の「母性愛」や「母性行動」の神経基盤までをも明らかにすることに成功した。今後も,脳機能イメージングによる高次脳機能研究はさらに大きな飛躍を遂げることは疑いのないところであろう。

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2008 日本保健科学学会
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