芸術工学会誌
Online ISSN : 2433-281X
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色が味覚イメージに及ぼす影響(画像デザイン)
木下 武志松田 憲綾部 かとり
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2010 年 54 巻 p. 107-112

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抄録

食品の商品パッケージに用いられている配色の一般的な特徴として、購買効果を高めるために誘目性を考慮した色やその食品の原材料等を連想させる色が用いられている。我々は、これら以外の配色の選択理由としては、購買者に商品の味覚イメージを連想させるための色が用いられていると推測した。そこで本論文は、実験1において色相が5つの基本味(甘味、酸味、塩味、苦味、旨味)の味覚イメージに及ぼす影響を検討した。30名の参加者にマンセル表色系から選択した有彩色15色、無彩色5色を1色ずつ呈示し、5つの基本味の味覚イメージについて7段階評定を行った。甘味は5YRなどの黄色、苦味はN1.5やN3などの灰色、酸味には5Yからイメージされることが明らかとなった。塩味や旨味に対しては、色のイメージの影響は少なかった。実験2において甘味、苦味に焦点を当て、これら2つの味覚イメージに影響を与えた色に関して、単一色相内の明度と彩度(色調)の変化の違いによる影響を検討した。甘味と苦味に影響を与えた色に対して、単一色相内の色調を変えた15色を提示し、実験1と同様に実験を行った。その結果、5YRや5RP、5Rといった有彩色に関しては、明度を高くすることによって甘味の味覚イメージが増すことや、低くすることによって苦味の味覚イメージが増すことが示された。5G、5BGなどの灰色に関しては、全体的に苦味の味覚イメージが喚起され、甘味の影響は少なかった。しかし、高明度・中彩度色の組み合わせにおいてのみ甘味が増して苦味が減少する結果となった。本研究の成果は、色相と味覚イメージの関連性とともに、色調を変化させることで味覚イメージの増減をコントロールすることの可能性を示すことができたと考えられる。これらの成果により、色がパッケージの食品の実際の味に近い味覚イメージとなり、購買者の求めているニーズに応える購買判断の判断基準となる情報を伝達して、購買意欲を高めることに繋がることが期待される。

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© 2010 芸術工学会
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