天然有機化合物討論会講演要旨集
Online ISSN : 2433-1856
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ヒドロキシプロリンリッチ糖タンパク質 extensin の親水性モチーフの合成研究と構造解析
石渡 明弘Kaeothip Sophon武田 陽一伊藤 幸成
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p. Oral7-

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抄録

 ヒドロキシプロリンリッチな糖タンパク質 (HRGP) は、翻訳後修飾としてタンパク質のプロリン残基の酸化により生じるヒドロキシプロリン (Hyp) 上に、オリゴ糖修飾を受けた構造を有し (Figure 1)、植物などに見いだされている。HRGP に分類される extensin[1] の中で、Hypは親水性繰り返し構造に多く含まれ、その(オリゴ)糖鎖修飾構造には、b-L-アラビノフラノシド (Araf) が含まれる。b-L-Araf の立体選択的な合成は、熱力学的、立体電子的に不利な b-1,2-cis 結合を含むため、化学合成上非常に困難である [2] が、最近、当研究室ではナフチルメチルエーテル (NAP) を介した分子内アグリコン転移 (IAD) [2a] を利用し、b-L-Araf 構造を立体選択的に合成する手法を見いだし [3]、オリゴ b-L-Araf 修飾糖ペプチドホルモンCLAVATA3 [3] の合成、及び、ビフィズス菌 (Bifido- bacterium longum) より見いだされた新規b-L-アラビノフラノシダーゼ [4] の基質としてパラニトロフェニルb-L-Araf の立体選択的合成に成功している [5]。今回、NAP-IAD を利用し、extensin のオリゴ L-Araf 4糖構造などの立体選択的合成を行い、extensin の親水性モチーフの一つであるSer(D-Galp1)-Hyp- (L-Araf4)-Hyp(L-Araf4)-Hyp(L- Araf3)-Hyp(L-Araf1) (1) [6] (Figure 2) の合成研究と構造解析をおこなったので報告する。

1. 合成計画

 植物由来のextensin の親水性モチーフには、Hyp リッチな繰り返し構造 (Ser-Hyp-Hyp- Hyp-Hyp) があり、その中には Ser(Galp1) (5)や Hyp(Araf4) [4, a-L-Araf-(1a3)-b-L- Araf-(1a2)-b-L-Araf-(1a2)-b-L-Araf-Hyp] のような構築困難な 1,2-cis 結合を有する複雑にオリゴ糖修飾されたアミノ酸構造が見いだされている (Figure 3)。立体選択的な1,2-cis 結合構築にNAP-IAD を利用する計画とし、まず、糖アミノ酸Ser(Galp1) (5) や Hyp(Arafn) (n = 1, 3 and 4) (2, 3 and 4) フラグメントをそれぞれ合成し、そのあとでペプチドを接続し、extensin の親水性モチーフ (1) を構築することした。Hyp(Araf4) 誘導体4は、まず a-L-Araf-(1a3)-L-Araf フラグメント (6)、及び2度の IAD を用いて b-L-Araf-(1a 2)-b-L-Araf-Hyp 誘導体 (7)、それぞれ合成し連結することとし、Ser(a-D-Galp1) 誘導体 (5) は、8 と 9 のIADを経て合成することとした。

2. (オリゴ) 糖アミノ酸フラグメントの合成

 Hyp誘導体10およびL-Araf供与体11より NAP エーテルを介した IAD、すなわち DDQ 酸化による混合アセタールの形成を経て、MeOTf–DTBMP での分子内 1,2-cis グリコシル化をおこない、目的のb-L-Araf-Hyp誘導体 (12) を立体選択的に調製した (Scheme 1)。得られた12をNAPエーテル (13) として保護し、ヒドロキシ基を有する糖供与体 (14) とのIADにてL-Araf2-Hyp誘導体 (15)を得た。同様に15をNAP化して16とし、14とのIADにてL-Araf3-Hyp誘導体 (17) を立体選択的に得た。16の脱TIPDS化、引き続くアセチル化にて、Hyp(Araf4) 誘導体 (4) の合成中間体7へと誘導した。11の脱TIPDS化、生じたジオール (19) の位置選択的アセチル化にて得られるL-Araf受容体(12) と、供与体 (20) とのグリコシル化では、隣接基関与の影響で1,2-trans-aグリコシド (21) が得られた。21のNAP基を除去し、4 の合成中間体チオグリコシド (6) を得た。そこで

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