日本林學會北海道支部講演集
Online ISSN : 2433-0825
アカエゾマツとエゾマツの天然雑種(会員研究発表講演)
佐々木 忠兵衛倉橋 昭夫濱谷 稔夫
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1983 年 31 巻 p. 106-109

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抄録

トウヒ属(Picea)は通常,針葉横断面菱形の種からなるハリモミ節(Sect. Picea=Sect. Eupicea WILLK.)と扁平な針葉を有する種からなるトウヒ節(Sect. Omorika)の2節に分けられるが,北海道産としては,前者にアカエゾマツ,後者にエゾマツが属する。この両種の人工及び天然の節間雑種についての報告はほとんどなく,遠藤らによる1,2例があるにすぎない。東京大学北海道演習林においても, 1953〜'65年の間のトウヒ属種間交雑試験の一部として両種の交雑2組合せを行なったが,そのうち1組合せの種子が発芽したのみで,その苗も発芽1年目に立枯病で失われた。従って,この種間組合せの他の多くの節間交雑同様に極めて交雑親和性は低いものとみられていた。ところで,筆者らは数年前から当演習林で20数年来圃場で育苗が続けられているアカエゾマツの中に,開芽の著しく早い個体がかなりの数が含まれていることに気付いていた。そして,その比率のとくに多く観察された現在育苗中のものについて1982年春から種々比較研究を行なったところ,これらの個体はアカエゾマツとエゾマツの天然雑種であるとの結論に達した。更に,既存のアカエゾマツ植栽地を調べて類似の個体を少なからず見出すことができた。本報ではこれらの調査の結果について報告する。苗畑の調査に当って,種々協力をお願いした佐藤昭一技官に謝意を表する。

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© 1983 北方森林学会
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