現代ファイナンス
Online ISSN : 2433-4464
論文
負債の調節機能としての転換社債:規律づけと効率性の両立可能性
赤羽根 靖雅
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2000 年 7 巻 p. 3-24

詳細
抄録

この論文の目的は,転換杜債が契約の不完備性を補完する制度とみなせることを示すことである.経営者を直接規律づけられないとき,負債が規律づけの機能を持つことがある.しかし,キャッシュ・フローが債券の額面を下回った場合債務不履行が起こり,最悪の場合企業は倒産する.倒産する企業は長期的にみると正の収益を生み出す場合もあるので,非効率が生じる可能性がある.つまり,負債による規律づけと長期的効率性にトレード・オフ関係がある.この論文は,転換社債保有者の転換請求権行使の意思決定と企業の収益に密接な関係がある点に着目し,転換社債は経営者の努力水準に応じて負債を調節する権限を投査家に与える証券と解釈できることを示す.そして,転換社債の発行で規律づけと長期的効率性のトレード・オフの間題を解決できることを示す.

著者関連情報
© 2000 日本ファイナンス学会/MPTフォーラム
次の記事
feedback
Top