社会福祉学
Online ISSN : 2424-2608
Print ISSN : 0911-0232
論文
地方公共団体の行政裁量と利用者の法的権利――生活保護制度における地方マニュアルからの考察――
大山 典宏
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 60 巻 3 号 p. 14-27

詳細
抄録

本稿の目的は,全国一律とされている生活保護の決定実施の基準が,実際には地方公共団体の間で異なっていることを示すことにある.研究手法としては,都道府県及び指定都市に同制度の運用マニュアルにつき公文書情報請求を行い,関連資料を入手した.次に,①国内概況の把握,②基準策定の地域差,③利用者の法的権利への影響の三つの視点から調査を行った.総計22,768頁の開示文書を分析したところ,都道府県及び指定都市68団体のうち62団体(91.2%)で運用マニュアルを作成していた.基準策定には地域的な偏りが認められるとともに,改訂頻度に差が生じていた.保護の実施要領と異なる,または実施要領にないルールの例として無料低額宿泊所の取扱いを示し,住宅扶助の不支給等で利用者の法的権利に影響を与える事例を確認した.調査結果から,都道府県及び指定都市における基準の差異が認められ,メゾレベルの研究の必要性を明らかにした.

著者関連情報
© 2019 一般社団法人 日本社会福祉学会
前の記事 次の記事
feedback
Top