社会福祉学
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成年後見制度における意思決定支援の理念を基盤にしたガイドラインの検討 : イギリス2005年意思決定能力法と社会福祉士後見人による実践事例を中心に
山口 理恵子
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2015 年 56 巻 2 号 p. 113-125

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抄録

成年後見制度における最大の課題は,本人の意思尊重と本人の保護が衝突する場合の意思決定支援である.本稿ではイギリス2005年意思決定能力法の基本原則およびチェックリストの分析と後見人等の実践の検討からソーシャルワークの視点に基づき本人の意思を尊重しつつ最善の利益を追求するためのガイドラインを作成した.その結果「試行可能性」,「析衷的選択肢」,「親族を含む家族・友人等周囲の意向と本人の意向との峻別」,「本人のリスク・生命の危険性・社会通念上の妥当性」,「本人への働きかけ」,「本人の意識化」,「最終決定において本人後見人双方に予測されるリスクを確認し対策を立てる」を加え10項目を作成した.ガイドラインに沿った支援は,意思決定支援における方針の共有,リスクマネジメントの役割を果たすと同時に,社会福祉の専門性を用い本人意思尊重と本人保護の相克を克服するエンパワメント実践の第一歩となることを示唆した.

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© 2015 一般社団法人 日本社会福祉学会
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