行動療法研究
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児童における認知の誤りと不安の関連について : 児童用認知の誤り尺度(Children's Cognitive Error Scale)の開発と特性不安の関連の検討(原著,<特集>社会福祉と行動療法)
石川 信一坂野 雄二
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2003 年 29 巻 2 号 p. 145-157

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抄録

本研究の目的は、認知の誤りと不安の関連を検討することであった。本研究では、児童の認知の誤りを測定するChildren's Cognitive Error Scale(CCES)を作成し、 CCESと特性不安との関連を検討した。まず、217名の児童を対象に、自由記述にて児童が不安や心配を感じる不安場面を収集した。その結果、12の不安場面が抽出された。次いで、5人の臨床心理学を専攻する大学院生が不安場面における認知の誤りの項目について検討を行った。その結果、認知の誤りの項目として23項目が抽出された。さらに、それらの項目について、819名(男子408名、女子411名)を対象にした主成分分析の結果、20項目が抽出された。CCESは再テスト法と、Cronbachのα係数によって、十分な信頼性があることが示された。CCESの妥当性については、小学校教諭2名を対象としたインタビューを用いた内容的妥当性の観点から確認された。また、CCESの合計点について性差、学年差について検討するために2要因の分散分析を行ったところ、女子のほうが男子よりも認知の誤り得点が高いことが示され、学年差はないことが示された。最後に、認知の誤りと特性不安の関連を検討するため、CCESの合計点を高群、中群、低群の3群に分類した。群を要因とした分散分析の結果、認知の誤り得点高群は、中群、低群より特性不安が高いことが明らかになった。以上のことから、認知の誤りを示す児童は不安が高いことが明らかになり、本研究の結果から、児童の不安障害に対して適切な治療をするためには、認知の誤りに対する介入の必要性が示唆された。

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© 2003 一般社団法人 日本認知・行動療法学会
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