行動分析学研究
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知的障害を持つ児童の支払い行動の形成と地域との関わり(<特集>ノーマライゼーションと行動分析)
赤根 昭英
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1995 年 8 巻 1 号 p. 49-60

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抄録

知的障害を持つ2名の生徒に、1000円未満の買い物ができるように教授した。それまで、生徒らは、10円を超える金額の支払や、2桁の金額の読み書きができなかった。教師(筆者)の自作による「計数板」という教具を使用し、硬貨の計数を訓練した。さらに「計数板」を補助具として用いて、実際に買い物をさせた。その結果、スーパーマーケットのレジスターの金額表示を見て支払ったり、菓子屋の店主が言った金額を聞いて支払ったりすることができるようになった。また、彼らが買い物をしていることを、店の人や周りの買い物客に知らせるようにすることで、児童が買い物をしやすい環境ができただけでなく、障害児に対する周囲の人々の理解を促すこともできた。さらに、彼らが学校で買い物ができるようになると、親たちも家庭で彼らの買い物を試みるようになった。算数指導という教授の文脈からも、地域生活の為の準備としても、教室から出て現実の社会場面で実際に硬貨を使う事は有効であると考えられる。

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© 1995 一般社団法人 日本行動分析学会
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