2006 年 27 巻 p. 187-204
本稿は,現代社会における子どもたちの存在状況を「コミュニケーション不全」と捉え,他者および世界との関わりに危機を抱える彼・彼女らが,再びコミュニカティヴな関係の地平に出で立つとはどのような経験を再獲得することなのかという問題を,ある「ひきこもり」経験者の証言をもとに考察する。さらに,この考察から見出された課題が美術教育においては「造形遊び」理論の中でとりわけ重要な課題として追究されてきた点をふまえ,<応答(呼応)の関係性>へとひらかれてゆくための基礎的な課題が,美術教育にとってなぜ重要な課題であるといえるのかを考える。