西日本皮膚科
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症例
尿管癌由来と考えられる Paget 様概観を呈した亀頭部転移性皮膚腫瘍の 1 例
岩切 琢磨山内 輝夫佐々木 大和加藤 由花須永 知里永田 茂樹
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2024 年 86 巻 2 号 p. 160-164

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抄録

62 歳,男性。糖尿病,高血圧,痛風,胃潰瘍,腎盂腎炎,および初診の 4 年前に尿管癌の膀胱浸潤に対し,外科的切除の既往があった。初診の約 1 年前,亀頭部に紅斑を自覚したが,外用薬により一時軽快した。初診の約 2 カ月前に再び亀頭部に紅斑がみられ,軽快しないため,当科を受診した。初診時,亀頭部の尿道口周囲にびらんを伴う境界明瞭な紅班を認めた。生検時の病理組織像では表皮内に淡明な胞体を有する異型細胞が胞巣状に増殖していた。続発性乳房外 Paget 病と診断し,陰茎切断術およびセンチネルリンパ節生検を行った。陰茎全摘時の病理組織像は,陰茎基部から亀頭に至るまで陰茎内で連続性に同様の腫瘍細胞が表皮の一部から海綿体に至るまで増殖,浸潤していた。表皮内には Paget 様細胞がみられ,腫瘍細胞は 4 年前の尿路上皮癌全摘時の腫瘍細胞と組織学的に類似していた。免疫組織化学的検査も,CK7(+),CK20(+),gross cystic disease fluid protein-15(GCDFP-15)(-)で 4 年前と一致した。原発巣と Paget 病変に連続性はなく,術後に両側鼠径部リンパ節転移および腸骨動静脈周囲リンパ節腫大がみつかったことから,続発性乳房外 Paget 病ではなく尿管癌の亀頭部皮膚転移であり,Paget 様概観を呈したものと考えた。既往に尿路上皮癌がある場合は亀頭への転移を常に念頭におき,皮疹を認めたら速やかな皮膚生検とその後の治療を行うべきである。また,逆に既往がない場合は尿路上皮癌の精査が必要だと考える。

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