西日本皮膚科
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症例
SERPING1 遺伝子に既知の変異を認めた遺伝性血管性浮腫 I 型の 1 例
中村 紗和子下村 裕
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2020 年 82 巻 6 号 p. 418-421

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抄録

症例は 38 歳,女性。6 年前から腸管浮腫による腹痛を反復するようになった。血液検査で C1 インヒビター(C1-INH)活性が低下していたことと,母・姉に遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema:以下HAE)Ⅰ型の既往があったことから,前医で同症と診断され,出産時などに C1-INH 製剤の投与を受けていた。予防内服としてトラネキサム酸 1500 mg/日を行っており,転居に際し加療継続のため前医皮膚科に紹介され,精査の目的で当院を受診した。血液検査では,C4,C1-INH 活性および定量がいずれも低値であり,HAE I 型として矛盾しない結果だった。さらに,遺伝子検査を行った結果,患者の SERPING1 遺伝子にミスセンス変異 c. 449C>T(p. Ser150Phe)がヘテロ接合型で同定された。本変異は過去に欧米人の HAEⅠ型の家系にも同定されていたことから,病的変異の可能性が極めて高いと考えられた。現在トラネキサム酸 1500 mg/日の予防内服を継続し,発作の発症なく経過している。HAE の発症機序は通常のⅠ型アレルギーとは全く異なり,発作時の治療法も特殊であることから,疾患について医療従事者に広く周知するとともに,患者の住居の近隣の総合病院に C1-INH 製剤を常備するなどの体制を整えることが求められる。

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