1984 年 46 巻 Suppl 号 p. 224-226
34才男子。出生時より下肢から臀部に単純性血管腫が認められていたが, 10才頃より足背, 下腿および胸背部に色素斑が発生した。さらに17才頃より両下腿に静脈瘤が認められるようになつた。色素斑は皮膚面と同高ないしはやや陥凹した粟粒大, 不整多角形の褐色斑で, 足関節付近では皮溝に一致しており, 特有の網状配列を呈していた。組織学的には, 表皮突起の真皮内突出, 基底層, とくに突出部における色素増加および基底細胞の核周囲性の空胞化がみられ, 網状肢端色素沈着症と診断された。血液検査では異常は認められなかつたが, 下腸間膜血管造影で下行結腸に静脈拡張が認められた。これらのことから本例における網状肢端色素沈着症, 単純性血管腫および静脈瘤は一種の母斑症的発現として理解される可能性があると思われた。