自然産出したスズキの複数油球卵の油球体積を胞胚期からふ化直前まで測定し, 複数油球の消長過程とそれらをもつ仔魚の形態を観察した。複数油球の大半は, 眼胞形成期から始まる油球の融合により, ふ化直前には単一油球卵になった。その油球体積は, 胞胚期の個々の油球体積を加算した値にほぼ一致した。複数油球卵から生まれた仔魚の中には体形が異常であり, 卵黄中の油球の吸収後にも体腔内に油球をもつ変形魚がわずかに見られたが, その出現率は約5%と低い値であった。ふ化率も比較的高いことなどから, 本種の自然産出による複数油球卵は種苗生産に使用できる可能性が示された。