歯科基礎医学会雑誌
Print ISSN : 0385-0137
マウス顎下腺アンドロゲンレセプターの細胞質ならびに核画分への分布とテストステロン投与の影響
客本 斉子
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1987 年 29 巻 3 号 p. 267-292

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抄録

雌雄マウス顎下腺より調製した細胞質ならびに核画分中のアンドロゲンレセプターを, 合成アンドロゲン 〔3H〕 R1881をリガンドとしてハイドロキシアパタイト法により測定した。その結果, レセプターの一搬性状には雌雄差は認められないが, その量は核レセプターは雄 (1,052fmol/mgDNA) で雌 (32fmollmgDNA) より著明に高く, 一方細胞質レセプターは雌 (512fma1/mgDNA) で雄 (368fmol/mgDNA) より有意に高かった。すなわち雄では全レセプター量の74%が核画分に, 残り26%が細胞質画分に見い出される一方, 雌では94%が細胞質画分に見い出され核画分にはほとんど検出されなかった。従って顎下腺アンドロゲンレセプターの細胞質ならびに核画分への分布には性差が認められることが判明した。さらに雌にtestosteroneを投与し両画分に検出されるレセプターの変動を調べたところ, 投与後1時間で細胞質レセプターが急激に減少し, 同時に核レセプターが増加した。その後細胞質レセプターは徐々に回復 (replenishment) し, 核レセプターも投与前のレベルまで減少した。なおa両レセプターの回復に要する時間は投与testosterone量に依存した。すなわちatestosterane量の多いほど細胞質レセプターのreplenishmentならびに核レセプターの投与前レベルへの減少に時間を要した。従ってこれらの変化は血中のアンドロゲンの濃度変化とパラレルであることが示唆された。また, 細胞質レセプターのreplenishmentは蛋白合成阻害剤のcycloheximideでは阻害されるが, RNA合成阻害剤のactinomycinDにより阻害されないことより, この過程は蛋白合成を介して起るものの, その調節部位は転写後レベルであることが示唆された。

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